リーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発した100年に1度と言われる世界同時不況であるが、状況は年明けからだいぶ好転してきたように思える。以前の状況とは明らかに異なる。Global Graphicsは、JawsとHarlequinという2つのRIPコア技術を保有し、今尚RIP技術の強化に投資している数少ない企業の一つである。今ハイエンドグラフィックアート市場で高く評価されているHarlequinサーバーRIPのRIPコアをベースとした2つのRIP開発キット(SDK)への引き合いが増えている。その一つがHarlequin PLUS Embedded SDKで、組み込み型コントローラー上に搭載するタイプのRIP SDKであり、二つ目がHarlequin PLUS Host Renderer SDKで、WindowsやLinuxといったホストベースの用途に最適なRIP SDKである。特に自社開発のRIPサーバー用のRIPコアとして注目されている。両SDKはサポートする複数の業界標準のページ記述言語(PDL)をネイティブに(中間PDL形式に変換せず入力PDL形式を直接解釈)処理する非常に高性能なRIPコア技術である。メジャーな他社RIPに比較し、数倍までの高速性を提供する。またクライアント独自のカラーマネジメントやスクリーニングなどのカスタマIPを統合するためのAPIを備えており、自社IPを統合した独自のRIPサーバーを構築できる。
デジタル印刷機と一言に言っても、カバーする処理速度のレンジは100 PPM~数千PPMとかなり広く、電子写真方式やインクジェット方式など方式はさまざまである。デジタル印刷機の主な特長は、小ロット印刷に優れており、必用な時に必用な部数を印刷できること、そしてバリアブル データ印刷等で受け手のニーズに合ったパーソナライズされた印刷物を必用な人に提供できることなどであり、これら特長を活かし新しい市場を開拓している。どちらの特長も、省資源化に貢献でき、時代のニーズにマッチしている。
このデジタル印刷の市場が今最も脚光を浴びている市場の一つであり、商業印刷市場で主にCTPを製造していた企業や、オフィス市場用のプリンタ・複写機を製造してきた企業が、上と下からこの市場に参入してきている。しかしながら、100 PPM~数千PPMの印刷機にオンザフライでRIPしながら印刷するには、非常に高速なRIP処理性能が求められ、RIPの処理速度がボトルネックとなる懸念が生じてきている。特に写真を含めたフルバリアブル データは、製版・RIP 処理に多くの時間が費やされ、生産性を低下させる要因にもなり、RIPの高性能化が求められている。
Global GraphicsのRIPは、デジタル印刷に相応しい機能・特長を有している。第一にRIPコアソフト自身が高度に最適化されており、業界最高レベルのパフォーマンスを叩き出す。第二にRIPコア内部にパフォーマンスを高めるユニークな機能を持っている。Harlequin RIPは、PDF Retained Rasterという機能を持っており、バリアブル データ印刷ジョブで、毎ページ現れる、もしくは高い頻度で現れる共通オブジェクトを自動的に検出し、一度ラスタライズしたラスターイメージをキャッシュし、これを以後のページで再利用することにより、RIPの処理速度を飛躍的に高める技術に対応している。またHarlequin RIPは、通常RIPの前処理で行う、インポジション(面付け)、カラーマネジメント、トラッピング等のワークフロー機能にin-RIPで対応できるため、印刷処理全体プロセスのボトルネックを解消できる。
Global Graphicsのクライアントには、マルチRIP構成にてRIP処理を分散し、数十~百を超えるRIPを並列に使用して、数千PPMの処理速度を実現しているクライアントがある。数百PPMを超えるRIP性能を引き出す方法として効果的な方法だが、如何に入力印刷ジョブを各RIPに割り振るかが実現のポイントとなる。Harlequin PLUS Host Renderer SDK v1.3では、複数RIPのライセンス認証に対応すべく、Harlequin License Server (HLS)を提供している。これによりブレードサーバー上に存在する複数のRIPがこのHLS からネットワーク経由でライセンス認証を受けることができる。またPDF/X-4p、PDF/X-5g、PDF/X-5pgに対応し、現在標準化の最終段階にあるPDF/VTへの準備も完了している。このように共通のページコンポーネントを明示的に区別できるPDFが標準化されることは大変好ましいが、これを使用してどのようにRIPを高速化するかは、各RIPベンダーの対応能力に依存するところが大きい。
Global Graphicsは、マルチスレッド レンダリングで15年を超える実績があり、現在マルチスレッド処理の更なる強化を進めている。またバリアブル データ処理では、RIP外部の処理モジュールと高度に連携し、コンポジション処理を格段に高速化する仕組みが搭載される予定である。この機能をフル活用する為には、RIPベンダーとメーカー間の深い協業が求められることになりそうだ。これら新技術への対応により処理速度の更なる向上が期待されている。
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