印刷業界の回復

東証1部上場企業の3月期業績が大幅な経常増益見通しだ。依然として中国など新興国向けの輸出が景気を押し上げているようだが、その波及効果が内需にも波及しはじめている。5月の連休明けから、多くの印刷機メーカーとの打ち合わせを行っているが、プリンタ/MFP 市場も回復してきているようだ。さらに PPC 用紙の販売量や粗大ゴミの量もここに来て大幅に増えているようで、景気の回復を裏付けている。欧州市場ではギリシャ問題が懸念されたが、EU 緊急理事会が開催されユーロ基金が創設されたことによって事態は収拾に向かっている。
プリンタ/MFP の開発トレンドは、二極化が進んでいる。ロウエンド・プリンタの更なる低下価格化と、高速デジタル印刷機の更なる高速化だ。ロウエンド・プリンタ市場では、劇的なロウコスト化が求められており、SOC によるコストの最小化は避けられない。また生産・開発拠点は既に中国・台湾・インドにシフトしており、生産・開発のグローバル化が益々進化していくものと考えられる。一方、ハイエンドの高速デジタル印刷機の領域では、従来の方式における処理速度のリミットが見えてきた、結果高速な RIP を求めている企業が多い。またバリアブル印刷が更に進化し、データーベースを使用したパーソナライズ印刷が更に進化すると思われる。一方、商業印刷では iPad の出現により多くの書籍が電子書籍に置き換わることが懸念されており、従来の本・雑誌とといった紙メディアと電子書籍との住み分けがキーとなる。また電子ドキュメントへのニーズも相乗的に高まるものと考えられる。また教科書も将来的には、電子書籍化され、小学生のランドセル姿が消える日が近いかもしれない。

デジタル印刷で求められるRIP

 リーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発した100年に1度と言われる世界同時不況であるが、状況は年明けからだいぶ好転してきたように思える。以前の状況とは明らかに異なる。Global Graphicsは、JawsとHarlequinという2つのRIPコア技術を保有し、今尚RIP技術の強化に投資している数少ない企業の一つである。今ハイエンドグラフィックアート市場で高く評価されているHarlequinサーバーRIPのRIPコアをベースとした2つのRIP開発キット(SDK)への引き合いが増えている。その一つがHarlequin PLUS Embedded SDKで、組み込み型コントローラー上に搭載するタイプのRIP SDKであり、二つ目がHarlequin PLUS Host Renderer SDKで、WindowsやLinuxといったホストベースの用途に最適なRIP SDKである。特に自社開発のRIPサーバー用のRIPコアとして注目されている。両SDKはサポートする複数の業界標準のページ記述言語(PDL)をネイティブに(中間PDL形式に変換せず入力PDL形式を直接解釈)処理する非常に高性能なRIPコア技術である。メジャーな他社RIPに比較し、数倍までの高速性を提供する。またクライアント独自のカラーマネジメントやスクリーニングなどのカスタマIPを統合するためのAPIを備えており、自社IPを統合した独自のRIPサーバーを構築できる。



 デジタル印刷機と一言に言っても、カバーする処理速度のレンジは100 PPM~数千PPMとかなり広く、電子写真方式やインクジェット方式など方式はさまざまである。デジタル印刷機の主な特長は、小ロット印刷に優れており、必用な時に必用な部数を印刷できること、そしてバリアブル データ印刷等で受け手のニーズに合ったパーソナライズされた印刷物を必用な人に提供できることなどであり、これら特長を活かし新しい市場を開拓している。どちらの特長も、省資源化に貢献でき、時代のニーズにマッチしている。



 このデジタル印刷の市場が今最も脚光を浴びている市場の一つであり、商業印刷市場で主にCTPを製造していた企業や、オフィス市場用のプリンタ・複写機を製造してきた企業が、上と下からこの市場に参入してきている。しかしながら、100 PPM~数千PPMの印刷機にオンザフライでRIPしながら印刷するには、非常に高速なRIP処理性能が求められ、RIPの処理速度がボトルネックとなる懸念が生じてきている。特に写真を含めたフルバリアブル データは、製版・RIP 処理に多くの時間が費やされ、生産性を低下させる要因にもなり、RIPの高性能化が求められている。



 Global GraphicsのRIPは、デジタル印刷に相応しい機能・特長を有している。第一にRIPコアソフト自身が高度に最適化されており、業界最高レベルのパフォーマンスを叩き出す。第二にRIPコア内部にパフォーマンスを高めるユニークな機能を持っている。Harlequin RIPは、PDF Retained Rasterという機能を持っており、バリアブル データ印刷ジョブで、毎ページ現れる、もしくは高い頻度で現れる共通オブジェクトを自動的に検出し、一度ラスタライズしたラスターイメージをキャッシュし、これを以後のページで再利用することにより、RIPの処理速度を飛躍的に高める技術に対応している。またHarlequin RIPは、通常RIPの前処理で行う、インポジション(面付け)、カラーマネジメント、トラッピング等のワークフロー機能にin-RIPで対応できるため、印刷処理全体プロセスのボトルネックを解消できる。



 Global Graphicsのクライアントには、マルチRIP構成にてRIP処理を分散し、数十~百を超えるRIPを並列に使用して、数千PPMの処理速度を実現しているクライアントがある。数百PPMを超えるRIP性能を引き出す方法として効果的な方法だが、如何に入力印刷ジョブを各RIPに割り振るかが実現のポイントとなる。Harlequin PLUS Host Renderer SDK v1.3では、複数RIPのライセンス認証に対応すべく、Harlequin License Server (HLS)を提供している。これによりブレードサーバー上に存在する複数のRIPがこのHLS からネットワーク経由でライセンス認証を受けることができる。またPDF/X-4p、PDF/X-5g、PDF/X-5pgに対応し、現在標準化の最終段階にあるPDF/VTへの準備も完了している。このように共通のページコンポーネントを明示的に区別できるPDFが標準化されることは大変好ましいが、これを使用してどのようにRIPを高速化するかは、各RIPベンダーの対応能力に依存するところが大きい。



 Global Graphicsは、マルチスレッド レンダリングで15年を超える実績があり、現在マルチスレッド処理の更なる強化を進めている。またバリアブル データ処理では、RIP外部の処理モジュールと高度に連携し、コンポジション処理を格段に高速化する仕組みが搭載される予定である。この機能をフル活用する為には、RIPベンダーとメーカー間の深い協業が求められることになりそうだ。これら新技術への対応により処理速度の更なる向上が期待されている。
 
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