マス・カスタマイゼーションでビジネスチャンス

 以前「印刷工場の究極のスマートファクトリー化」ブログでマス・カスタマイゼーションの話を少ししましたが、今回は大量生産の仕組みを土台にしたマス・パーソナライズド/カスタマイズド製品を生産する工場のスマートファクトリー化について少し話をします。ここで説明するスマートファクトリー化は、前に話した「印刷工場の究極のスマートファクトリー化」ではなく、あらゆる製品を製造する工場内で印刷を使用する製造プロセスのスマートファクトリー化の話となります。

 デジタル印刷には成長の大きな可能性があり、それはデジタル印刷であるが故に提供できる領域です。あらゆるものに印刷でき、独自にカスタマイズ/パーソナライズされた製品を提供できる領域です。 デジタルインクジェット印刷は、すべてのオブジェクトにリアルタイムで印刷する内容を変えることができます。 これはたとえば、フローリング、3D オブジェクト、タイル、衣類など製品を大量にカスタマイズする必要のある分野でビジネスチャンスとなります。

 消費者の間でマス・カスタマイゼーションは成長トレンドにありますが、印刷市場ではグリーティングカードや写真集などの従来の分野以外では、大きな影響を与えていません。 マス・カスタマイゼーションをその他大多数の製品の製造にもたらすには、印刷業界が探求を始める必要があります。

 大量生産に近い価格でマス・パーソナライズ/カスタマイズされた製品は、小売業者にとって「聖杯」となります。 この「聖杯」を手に入れると、通常の量産品を生産することもできます。 工場は、大量生産の速度で個別に印刷された製品を生産できる必要があります。 注文から検査まで、プロセス全体で完全な自動化が必要になります。 また投資収益率を最大化するために、生産は24時間年中無休で稼働する必要があります。

 この完全自動化された生産ビジョンは、インダストリー 4.0 と「スマートファクトリー」といういくつかの一般的な用語にカプセル化されています。 スマートファクトリーは、生産プロセス全体を自立的に実行するように設計されており、これには印刷サブシステムが含まれます。 印刷オペレーターは、一つを監視するだけで、スマートファクトリー全体を監視出来るようになります。 スマートファクトリーは、完全に自動化されているため、人件費はもはや主要なコストではありません。 これにより、製造がオンショアに戻せる可能性があります。これは、新しい商品の販売に大きなチャンスをもたらします。 在庫ゼロ、廃棄物ゼロ、地産地消も可能となり、環境にやさしくなります。

詳しくは、以下Webサイトのムービーをご覧ください。
https://www.globalgraphics.com/products/smartdfe

印刷工場の究極のスマートファクトリー化(II)

 スマートファクトリーの目的は、工場内にAIやIoTを導入し、ベンダーを問わずあらゆる機器を接続し、情報を活用することで、品質や生産性の向上、自動化、見える化などを実現することですが、ここで議論になるのは工場で行う仕事の範囲だ。 多くの場合、印刷から製本までの工程を工場で行う仕事ととらえ、その工程を自動化することを目標としていることが多いと思うが、究極のスマートファクトリーでは、見積、受発注・印刷データの入稿・管理、プリフライト、承認プロセス、Print Ready PDFの生成、RIP、スクリーニング、印刷、後加工、発送までを含む完全な自動化の意味となります。 以下に究極のスマートファクトリーの構成ブロックと、課題となるポイントを示します。

見積:ジョブコストの見積もりは、印刷で必要となるメディアのコストは勿論の事、ジョブで消費されるインク量を予測しコストに反映する必要がある。(Job Cost Estimator/SmartJCEで対応可)メディアコストは、ギャンギングや入れ子面付けが使用(CLUDFLOWで対応可)できるかどうか、さらには他社から入稿されるジョブの混合印刷含め、ジョブの納期を考慮しながら最適化を図ることがもとめられる。

受発注・印刷データの入稿・管理:勿論、入稿される印刷ジョブのファイル形式はPDF(PDF/X)に限定することが望ましい。AIファイルで入稿された場合に発生する、使用イラストレーターのバージョンの違い、フォントが埋め込まれていない、外部参照のファイルが添付されていないなどの原因で発生するさまざまな問題を回避することは自動化にとって最低限の要件である。またジョブの入稿は、すべてWeb to Printになるものと思われます。 さらにMISと連携して動作することは必須要件だ。 入稿されたジョブの履歴は管理され、古いバージョンのジョブとの相違箇所をWebブラウザー上で表示できる必要もある。(CLOUDFLOWで対応可)

プリフライト:入稿されたデータは、事前設定されたクライテリアに従い、直ちにプリフライトチェックが行われ、問題点(例えば、RGB画像の使用、低解像度の画像、等)は、Webブラウザ上でその箇所を示すかたちでレポートされることが望ましい。(CLOUDFLOWで対応可)単に、RGB画像が含まれていますなどの情報では、不親切だ。

承認プロセス: 多段階承認を含め、承認者が自身のPCのWebブラウザ上で、リモートで承認できることが好ましい。(CLOUDFLOWで対応可)

Print Ready PDFの生成:承認が終わったら、ただちに印刷できるPDFの生成を行う必要がある。 ステップ&リーピート、面付け、バリアブルデータ印刷ジョブの生成、デュプレックス対応などをRIPの処理前に行い、Print Ready PDFを作成する。 (CLOUDFLOWで対応可) コスト最小化のためにステップ&リピートやギャンギングを適切に行うことが求められ、AI技術の活用が求められる。

RIP: 多品種・小ロットのジョブをいかに迅速に処理できるか、さらにマス・カスタマイゼーションに対応するために、インクジェット印刷にフォーカスしていくことは必須要件だ。 さらに200m/分などの超高速なワンパスの印刷機の速度に追従できる超高速RIPシステムが必要となる。 この速度に追従するためには、最新の高速PCを使用しても1つのRIPコアだけでは不可能であり、複数RIPによる高速分散処理が求められる。 もちろん、使用するRIPの数を最小化するためにRIP単体で処理性能が高いことが求められる。(Fundamentals/HQN Directで対応可)

スクリーニング:最新のインクジェットヘッドは、マルチドロップレットサイズに対応しているので、マルチドロップレットに対応したインクジェット専用のスクリーニングに対応する必要がある。(ScreenPro/AISが対応)また、メディアの特性(ex. 吸収性が高い等)により最適化されたスクリーニングを選択できる必要がある。(Advanced Inkjet Screensを用意)さらに、ワンパスのインクジェットでは、プリントバー内部もしくは異なるプリントバー間の濃度バラツキによる印刷ムラ、または特定のインクジェットノズルの目詰まりによる筋問題を自動的に解決できることが求められる。(PrintFlatが対応)また画像検査装置用に印刷解像度とは異なる解像度・深度で、またRGBでRIP処理を行える必要がある。(HQN Directの構成で対応可)

印刷:メジャーなインクジェットヘッドメーカのヘッドをドライブできる既成のプリントヘッドコントローラーカードを提供可能。(Meteor Inkjetによる)

後加工:サードベンダーの断裁機やさまざまな後加工機との連携はOPC UAを通して行う。 (SmatDFEが対応)

印刷工場の究極のスマートファクトリー化

 印刷業のスマートファクトリー化を「すでに実施している」または「検討している」と答える企業の割合はあまり増えていないようです。 スマートファクトリー化で具体的な成果を出し始めた企業がある一方で、DX化の必要性は感じているが、なかなか思うように進まない企業も多くあるようです。 またすでに実施している印刷工場でもスマートファクトリー化の実施状況は概ね断片的であり、当社が考える「究極のスマートファクトリー化」による完全自動化とは大きな隔たりがあるようです。

 スマートファクトリーとは、ドイツ政府が提唱するインダストリー4.0を具現化した先進的な工場のことです。工場内にAIやIoTを導入し、ベンダーを問わずあらゆる機器を接続し、情報を活用することで、品質や生産性の向上、自動化、見える化などを実現することが目的です。 当社は、ドイツで「インダストリー4.0」の推奨通信プロトコルとして指定されたプラットフォーム独立の国際標準通信規格であるOPC UAを採用しております。 欧州では、OPC UAの採用がかなり進んでおり、すでにデファクトスタンダードとなっております。 さらに中国でも中国製造2025に採用されました。

 DXを活用し、人の作業負荷を大きく低減するスマートファクトリー化は、労働人口の減少が続く日本の製造業にとって避けて通れない課題です。 今後ますます深刻な人手不足に陥っていくと予想される製造業ですが、AIやIoTなどを導入し、機器の稼働や管理などを自動化することで、さまざまな業務が人間を必要としなくなります。 スマートファクトリー化を実現することで、人材不足、特に高度な熟練を必要とする専門知見を有する専門家の不足問題を抜本的に解決できるのです。その結果、人件費の削減につながり、品質を高く維持したままで生産性を最大化できます。

 Global Graphicsは、自社のFundamentals (HQN Direct)をベースにしてスマートファクトリー化のために必要となる製品と要素技術の開発を進めております。 Fundamentalsは、ジョブの入稿から、プリフライト、承認プロセスの自動化、面付け/ステップ&リピート、バリアブルジョブの生成、3Dシュミレーション、超高速RIP処理、スクリーニング処理、濃度補正、インクジェットヘッドドライバボードに至る印刷プリプロセス機能全般をサポートできるワークフローソリューションです。 さらに入力PDFジョブの最適化や達成可能なRIP処理速度を予測したり、インク使用量を正確に見積もる機能にも対応できます。 またサードベンダーのインク供給システム、画像検査装置、後加工機との連携が可能です。 Global Graphicsが本年4月に発表したSmartDFEは、スマートファクトリー化に対応するためにOPC UAに対応し、Fundamentalsが管理する情報をすべてのOPC UA対応機器間でやり取りできます。 このようにインダストリー4.0に対応し、さらにMIS統合をサポートするので、印刷業務の完全自動化を達成できます。 また当社開発の Artmis Print Operator AI が、ワークフローを最高の速度と品質で実行しつづけるために必要となるガイダンス、究極的には自律的な意思決定を提供します。 スマートファクトリー化が進化すると、故障予知と、ロボティクスとの連携が必要ですが遠隔・自動保守も可能になり、さらには消耗品発注の自動化やロジスティクスとの連携も視野に入ります。

 今や印刷は、多品種・小ロットの時代になりました。 以前30万円稼げた仕事が今は3万円しか稼げない仕事となりました。 小ロットの仕事をいかに速く、且つ少コストで達成するかが企業存続の要件となっております。 もしくは、マス・カスタマイゼーションに活路を見出す企業もあるでしょう。 マス・カスタマイゼーションとは、大量生産の仕組みを土台とした上で、オーダーメイド印刷を提供することです。 印刷で対応できる業務の裾野は広がっております。 たとえば、ウォールペーパー、カーペット、タイル、衣類、フロアリング、3Dオブジェクト等です。 キーとなる要素印刷技術は、インクジェットを使用したデジタル印刷にフォーカスしたスマートファクトリー化です。 このように究極のスマートファクトリー化が実現すると、印刷工場の製造プロセスが根底から変わり、それに応じて提供できる製品とビジネスモデルも根本から変わります。

SmartDFEに関するインタビュームービー

 Global Graphics SoftwareのVP of Products and ServiceであるEric Worrallに対するDavid ZwangによるSmartDFEに関するインタビュームービーが以下サイトにポストされておりましたのでお時間があれば是非御覧ください。 本年4月にGlobal Graphicsが発表したSmartDFEとは何か、そしてスマートファクトリーで根底から変わる印刷工場の製造プロセスと製品、さらにはビジネスモデルに関する概要を理解していただけたらと思います。

https://whattheythink.com/video/105972-global-graphics-eric-worrall-smartdfes/?utm_source=newsletter1&utm_medium=email&utm_campaign=daily