トラッピング技術

プロモーション関連の印刷は、固定内容の大量印刷での物量的な手法から、一つ一つの印刷物を各顧客のニーズに応じてカスタマイズして送るバリアブル(可変)印刷手法に変わりつつあります。また固定内容の印刷物も、必要な時に必要な部数を印刷するショートラン印刷が増加しており、それらを可能にする高速デジタル印刷機に脚光が集まっております。しかしながら、顧客は印刷方式の違いには通常興味はなく、出力品質に対する期待値は、従来の商業印刷レベルを期待しております。このような状況の中、デジタル印刷にも高い出力品質が求められており、トラッピング技術への興味も高まりつつあります。



通常カラー印刷プロセスでは、印刷デバイスの解像度で各色版に分版(通常CMYK分版)されたページ単位のラスタイメージを、印刷プロセス上異なる場所で順番に印刷メディア上に転写していきます。ここで、印刷メディアを搬送する過程で、用紙のスキューや、用紙の伸縮、もしくは印刷機器の調整不良やさまざまな不確実性により、分版されたページコンテンツのメディア上の物理的位置が各色版間でわずかにズレが生し、結果としてメディアの地色がオブジェクトの周りに現れる問題が発生することがあります。この問題が墨文字の周りで発生する場合は、ブラックオーバープリントをオンにすることで回避することもあります。しかしながら、墨文字以外では文字の色が変わってしまいます。また例えばシアンとマジェンダの2つのオブジェクトが隣接する場合の隙間の問題は、オーバープリントでは解決できません。この問題を包括的に回避する技術が、トラッピング技術です。



トラッピング技術は、異なるカラーナットのオブジェクトが隣接する境界線上で片方のオブジェクトを、他方のオブジェクトにわずかに重なるように広げ、上記要因による位置ズレが発生しても、用紙メディアの地色が現れるという問題を回避する技術です。オブジェクトの広げる方向により、スプレッドやチョークと呼ばれます。これは、背景色上のオブジェクトに注目した呼び方であり、注目しているオブジェクトを広げる(スプレッド)、もしくは狭める(チョーク)かの観点における呼び方です。通常、より淡い色側のを濃い色の側に伸ばし重ねます。



トラッピング技術には、ラスタートラッパとオブジェクトラッパとの2つの方式があります。ラスタートラッパでは、RIP 後のラスターイメージ上でトラップが必要となる箇所を検出し、トラップ処理を行います。 一方、オブジェクトトラッパでは、PDL もしくは中間形式(ディスプレイリスト)上でトラップの必要な箇所を検出し処理します。通常ラスタトラッパはピクセルベースでの処理が必要となるため、オブジェクトトラッパより処理時間がかかります。またオブジェクトトラッパは、オブジェクトの特質を認識できるので、オブジェクトに応じて、より細かな制御が可能です。



通常オブジェクトトラッパは、一方の境界アウトラインをその境界色で他方オブジェクト側に広げますが、より高度なトラッパでは円もしくは楕円のブラシによりストロークします。これにより印刷プロセスのX軸とY軸でで異なるトラップ幅を設ける(Anamorphic trap)ことが可能となります。通常印刷プロセスでは、その印刷の方式的な特性からX軸とY軸で異なるトレランスがあるのが普通であり、このトラップ(Anamorphic trap)によりトラップ幅を効果的に最小化できます。またトラップのかかった箇所が目立たないように、徐々に背景色へフェードさせることも出来ます。このトラッピング(Fethered trap) では、トラップ部分を視認されにくくします。またオブジェクトのサイズに応じて異なるトラップ幅を設定できます(Small object protection)。これにより小さな文字で発生する文字のつぶれの問題を回避することが出来ます。



その他、スポットカラーの扱い、スプレッドとチョークがグラデーションを用いたオブジェクトで突然反転してしまう問題の対策、エンドの処理方法、本来のトラップ幅が、関連オブジェクトが狭くなることにより、確保できなくなる場合の処理、トラップ効果の検証方法等、トラップにまつわる技術的課題は多い。Harlequin RIP の様々なトラッピング機能が、以下 PDF 内で解説されているので、さらに詳しく知りたい諸氏は参照されたい。



http://www.globalgraphics.com/pdfs/products/trappro.pdf
http://www.globalgraphics.com/pdfs/products/trappro_wp.pdf



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