さまざまな PDF/X

Adobe Systems 社の開発した PDF 仕様をベースにし、特定の用途に特化したさまざまなサブセット規格が ISO の国際規格で制定されております。最初に紹介するのが、PDF/X-1a、PDF/X-3、そして PDF/X-4 です。これらの形式を用いることにより、サービスプロバイダや出版会社は、入稿されたファイルが、印刷プロセスで問題を引き起こす可能性が低く、一定の品質が保たれたものであることが期待できます。この期待値を更に確実なものにするために、プリフライトと目視による検査も必用です。現時点では、PDF/X-1a が主流ではありますが、今後 PDF/X-4 の利用が増えてくると思われます。PDF/X 規格は、今尚進化し続ける規格であり、制定年度を付けないと仕様を特定できません。



PDF/X-1:1999 (ANSI CGATS.12/1-1999)
PDF 1.2 に準拠して作られた規格 (今は使われない)
PDF/X-1:2001 (ISO 15930-1:2001)
PDF 1.3 に準拠して作られた規格(今は使われない)



PDF/X-1a:2001 (ISO15930-1:2001)
PDF/X-1a:2001 形式は、PDF 1.3 仕様のサブセットであり、画像やフォント等のすべてのリソースが PDF/X-1a ファイル内に埋め込まれており、トラップ処理が行われているかどうか明確になっており、メディアサイズと仕上がりサイズもしくはアートサイズが定義されており、指定印刷条件が指定されているか、もしくは URL か ICC プロファイルにより印刷条件を表す出力インテントが指定されえており、すべてのカラーは、CMYK (もしくは特色) で定義され、RGB やディバイス非依存カラーを含んでいない。日本の印刷業界では、Japan Color 2001 Coated プロファイルが通常使用されます。(尚、PDF/X-1a では、PDF/X-1 で許容していた暗号化と OPI 参照を禁止しました。)



PDF/X-3:2002 (ISO15930-3:2002)
PDF/X-3:2003 形式も、PDF 1.3 仕様のサブセットであり、基本的に PDF/X-1a 形式のスーパーセットです。PDF/X-3 形式は、カラー管理されたカラースペース(例えば Lab, CalRGB もしくは ICC プロファイルを埋め込んだ他のカラースペース)に対応しただけでなく、グレースケール、CMYK、そして特色と混在して使うことも可能です。



PDF/X-1a:2003 (ISO 15930-4:2003) / PDF/X-3:2003 (ISO15930-6:2003)
旧 PDF/X-1a:2001 と PDF/X-3:2002 は、PDF 1.3 仕様のサブセットでありましたが、2003 年度版では、PDF 1.4 仕様をベースとするように改変されました。大きな違いは、透明効果のサポートです。ただし、PDF 1.4 で追加された JBIG2 やセキュリティーは不許可である。



PDF/X-4 (ISO15930-7)
PDF 1.6 仕様をベースにしており、全ての要素が RGB カラー、Lab カラー、プロセスカラー(CMYK)と特色で構成されております。透明効果を含むことが可能であり、JPEG2000 に対応できるので、より高い品質でまた効率的に画像を圧縮することが可能となりました。またレイヤーの保持が可能です。ICC ver.4 へも対応しております。PDF/X-4 形式を採用することにより、カラーマネージメントの効果をより適正に適用することが可能となり、また文字のヒント処理などにおいても従来は分割・統合処理においてラスタライズやアウトライン化されていたものが、最終ラスタライズ処理時にヒント処理が行えるので、より美しい文字品質が得られるようになりました。特に透明効果は無意識のうちにデータに取り込まれているので、PDF/X-4 を用いることにより、無意識のうちに品質が改善されることが期待されます。



PDF/X-2:2003 (ISO 15930-5:2003)
PDF/X-1a、PDF/X-3 そして PDF/X-4 は、完全データー用のファイル形式ですが、PDF/X-2では一部を PDF/X-1a、PDF/X-2、PDF/X-3 として外部参照(メタデータにより) することが可能になります。ワークフローシナリオは、もし OPI の様なワークフローを想像できれば説明は不要でしょう。実際には、PDF 1.4 のリファレンス XObject メカニズムを少し拡張したものであり、転送者と受信者が最終完全データを作成する前に、重いイメージを外した PDF/X-2 ファイル形式でファイル交換できることにより、作業効率を高めることができます。



PDF/X-5 (ISO 15930-8)
PDF/X-4 をベースに 画像やグラフィックスイメージへの外部参照に対応し、デザイナーが低解像度画像での作業を可能にし、出版や新聞印刷において、広告や編集結果をワークフローの遅い段階で入れることを可能にします。また ICC プロファイルの外部参照を行うことが可能になります。また PDF/X-5 では 4 色以上のインキ数に対応する N-Color (HiFi カラー等への対応)のサポートが追加されました。またフォントの外部参照も検討されましたが、不確実性の懸念の為 PDF/X-5 への導入は断念されたようです。



その他の PDF/X 規格



PDF/A (ISO19005 Part1)
電子ドキュメントを長期保存するための規格であり、PDF1.4をベースにしております。現在、PDF 1.6 をベースにした国際規格 ISO19005 Part 2 が議論されているようです。



PDF/E
3 次元 CAD データ交換用の標準化を目的に提案されております。



PDF/AU
データ交換用の標準化を目的として提案されております。



PDF/H
電子カルテなどのヘルスケア分野における規格も提案されております。



PDF/X-Plus / PDF/X-PlusJ
PDF/X をベースにした印刷用PDFの仕様と製作のガイドラインに付せられた総称で、Ghent PDF Workgroup という非営利団体が策定を行っております。



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