JPEG 2000 vs. HD Photo

JPEG 2000 形式は、画像符号化の標準化を行う ISO と ITU-TS の共同組織である Joint Photographic Experts Group (JPEG) により、2001 年 1 月に規格化された静止画像圧縮方式である。圧縮方式に関しては、JPEG が離散コサイン変換方式 (DCT: Discrete Consine Transform) を用いていたのに対し、JPEG 2000 は離散ウェーブレット変換方式 (DWT: Discrete Wavelet Transfor) を用いている。JPEG と JPEG 2000 の間では圧縮方式に関する互換性がないため、両圧縮方式をサポートするためには、それぞれ異なる Codec が必要となる。



JPEG 2000 は、JPEG に比較し、高い圧縮率を達成可能で、圧縮率を高めた時に発生するブロックノイズやモスキートノイズが発生しないのが特徴である。また、ロッシー/ロスレスの両圧縮方式に対応でき、16 ビットに対応でき、デジタルカメラの CCD 情報をロス無く保存できる能力を持っている。



発表当初は、JPEG 2000 形式は急速に普及するものと期待されたが、現在に至るも、デジタルカメラへの実装は進んでおらず、Internet Explorer への対応も進んでいないのが実情だ。理由は、圧縮時の計算コストが高く、圧縮/伸張処理に多くの時間がかかるためだ。また Windows が OS レベルでサポートしていないのも致命的だ。



一方、Microsoft が Windows Vista と共にリリースした HD Photo 形式も、高い画像品質と圧縮率を両立できる(詳細は、私のブログの"HD Photo とは ?"を参照)。 HD Photo 形式は、Windows の OS レベルのサポートがあるばかりでなく、XPS (XML Paper Specification) ドキュメントの中にも直接埋め込むことが可能だ。現時点で、HD Photo は Internet Explorer でサポートされていないが、Microsoft は、将来サポートすることを明らかにしている。さらに、HD Photo を含む XPS ドキュメントを Internet Explorer で直接表示できる。 現時点では HD Photo 形式も JPEG 2000 同様に、まだデジタルカメラで直接サポートされていないが、Microsoft は、カメラメーカーをパートナーに取り込んでおり、2007 年 3 月時点で 12 ~ 18 ヶ月以内に HD Photo 形式で出力できるカメラの出現を予測した。また、2007 年 3 月に Photoshop (CS2/CS3) 用プラグインをリリースしており、Photoshop に入力されるデジタルカメラの RAW イメージ画像を、HD Photo 形式に変換できるので、当面はこれで事足りる。また Microsoft は HD Photo 形式の仕様を JPEG に提出し、「JPEG XR」 として標準化することを提案している。また、XPS 形式が一つのイメージ形式として HD Photo 形式をサポートしているため、WPF (Windows Presentatin Foundation) 対応のアプリケーションは HD Photo 形式のイメージ画像をそのまま XPS ドキュメントに埋め込むことができる。



Internet Explorer で HD Photo 形式がサポートされると、高いイメージ品質と高い圧縮率を両立するイメージ形式が Web 上で使用できるようになる。これは、Web の世界にとっては画期的なことだ。

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