印刷工場の究極のスマートファクトリー化

 印刷業のスマートファクトリー化を「すでに実施している」または「検討している」と答える企業の割合はあまり増えていないようです。 スマートファクトリー化で具体的な成果を出し始めた企業がある一方で、DX化の必要性は感じているが、なかなか思うように進まない企業も多くあるようです。 またすでに実施している印刷工場でもスマートファクトリー化の実施状況は概ね断片的であり、当社が考える「究極のスマートファクトリー化」による完全自動化とは大きな隔たりがあるようです。

 スマートファクトリーとは、ドイツ政府が提唱するインダストリー4.0を具現化した先進的な工場のことです。工場内にAIやIoTを導入し、ベンダーを問わずあらゆる機器を接続し、情報を活用することで、品質や生産性の向上、自動化、見える化などを実現することが目的です。 当社は、ドイツで「インダストリー4.0」の推奨通信プロトコルとして指定されたプラットフォーム独立の国際標準通信規格であるOPC UAを採用しております。 欧州では、OPC UAの採用がかなり進んでおり、すでにデファクトスタンダードとなっております。 さらに中国でも中国製造2025に採用されました。

 DXを活用し、人の作業負荷を大きく低減するスマートファクトリー化は、労働人口の減少が続く日本の製造業にとって避けて通れない課題です。 今後ますます深刻な人手不足に陥っていくと予想される製造業ですが、AIやIoTなどを導入し、機器の稼働や管理などを自動化することで、さまざまな業務が人間を必要としなくなります。 スマートファクトリー化を実現することで、人材不足、特に高度な熟練を必要とする専門知見を有する専門家の不足問題を抜本的に解決できるのです。その結果、人件費の削減につながり、品質を高く維持したままで生産性を最大化できます。

 Global Graphicsは、自社のFundamentals (HQN Direct)をベースにしてスマートファクトリー化のために必要となる製品と要素技術の開発を進めております。 Fundamentalsは、ジョブの入稿から、プリフライト、承認プロセスの自動化、面付け/ステップ&リピート、バリアブルジョブの生成、3Dシュミレーション、超高速RIP処理、スクリーニング処理、濃度補正、インクジェットヘッドドライバボードに至る印刷プリプロセス機能全般をサポートできるワークフローソリューションです。 さらに入力PDFジョブの最適化や達成可能なRIP処理速度を予測したり、インク使用量を正確に見積もる機能にも対応できます。 またサードベンダーのインク供給システム、画像検査装置、後加工機との連携が可能です。 Global Graphicsが本年4月に発表したSmartDFEは、スマートファクトリー化に対応するためにOPC UAに対応し、Fundamentalsが管理する情報をすべてのOPC UA対応機器間でやり取りできます。 このようにインダストリー4.0に対応し、さらにMIS統合をサポートするので、印刷業務の完全自動化を達成できます。 また当社開発の Artmis Print Operator AI が、ワークフローを最高の速度と品質で実行しつづけるために必要となるガイダンス、究極的には自律的な意思決定を提供します。 スマートファクトリー化が進化すると、故障予知と、ロボティクスとの連携が必要ですが遠隔・自動保守も可能になり、さらには消耗品発注の自動化やロジスティクスとの連携も視野に入ります。

 今や印刷は、多品種・小ロットの時代になりました。 以前30万円稼げた仕事が今は3万円しか稼げない仕事となりました。 小ロットの仕事をいかに速く、且つ少コストで達成するかが企業存続の要件となっております。 もしくは、マス・カスタマイゼーションに活路を見出す企業もあるでしょう。 マス・カスタマイゼーションとは、大量生産の仕組みを土台とした上で、オーダーメイド印刷を提供することです。 印刷で対応できる業務の裾野は広がっております。 たとえば、ウォールペーパー、カーペット、タイル、衣類、フロアリング、3Dオブジェクト等です。 キーとなる要素印刷技術は、インクジェットを使用したデジタル印刷にフォーカスしたスマートファクトリー化です。 このように究極のスマートファクトリー化が実現すると、印刷工場の製造プロセスが根底から変わり、それに応じて提供できる製品とビジネスモデルも根本から変わります。

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