拡張色域印刷に最適なPDF作成のヒント
Adobe社のIllustrator 2023を用いてしてワインボトルのラベルをデザインする例を、PDFの作成方法を一例に説明します。
まず、どのような構成でアートワークが作られているかを説明(CMYKカラーの場合)します。

上部帯部:Illustratorで生成 Gold特色
Hybrid Software Group PLC: アウトライン化テキスト K=100%
PINNACLE: PNG画像 リンクファイル Adobe RGB
女性の写真画像: JPEG画像 リンクファイル Adobe RGB (元はsRGBだがCoPrAでAdobe RGBに変換済み)
SmartDFE : AI リンクファイル CMYK U.S. Web Coated (SWOP) => 開く時無効となる
Global Graphics: アウトライン化テキスト Gold Emboss特色
Serial No. : アウトライン化テキスト K=100%
00000001: Gill Sans Regular Full Embedded K=100%
RGBカラーバー: TIFF画像 リンクファイル Adobe RGB
CMYKカラーバー: TIFF画像 リンクファイル CMYK (no tag)
下部帯部: Illustrator で生成 K=80% グレー
東京都...: アウトライン化テキスト 白
通常Illustratorで最初にドキュメントを作成する時、「ドキュメントのカラーモード」として、「CMYKカラー」もしくは「RGBカラー」を選択します。 これはIllustratorの仕様のようです。 印刷会社からは、通常「CMYKカラー」を選択するように指示されると思いますが、RGB印刷やビビッドカラー印刷では「RGBカラー」を選択するように指示されることもあるようです。 しかしながら、「RGBカラー」を選択すると、Illustrator上で作成するすべてのオブジェクトが基本的にRGB形式のオブジェクトとなり、CMYKの値が制御できないといった問題が発生します。 私の希望は、RGBやCMYKオブジェクトが一つのPDF内に混在でき、それぞれのオブジェクトにプロファイルがタグ付けされていることなのですが、Illustratorでは仕様的な制約があります。 なかなか思う通りにオブジェクトのカラースペースを制御できません。
Illustrator上で作成されるオブジェクトは、基本的には「ドキュメントのカラーモード」で設定されたカラースペースのオブジェクトとなります。 ただし、外部リンクを使用すれば、リンクされる外部ファイルのカラースペースを保持できるようです。 この特徴を活かして、希望するPDFを制約があるもののなんとか作成できそうです。 尚、リンク画像を埋め込むとドキュメントのカラースペースに統合されてしまいますので、常にリンクを維持するように注意が必要です。
以下は、「ドキュメントのカラーモード」で、「CMYKカラー」と「RGBカラー」モードを選択して生成したPDFをPACKZで表示したときのスクリーンショットです。

左上側が「CMYKカラー」を選択したときに作成されるPDFの表示例で、右下側が「RGBカラー」を選択したときに作成されるPDFの表示例です。 PACKZは、印刷用のツールなので、表示ではCMYKカラースペースに一度変換し、それを表示用の画面のプロファイルでRGBカラースペースに戻して表示しています。 結果、スクリーンショット的には両者でさほど違いは見受けられません。
CMYKオブジェクトとしてリンクされているCMYKカラーバー画像は、CMYKオブジェクトとしてPDFに埋め込まれているので、両PDFともCMYKのピュアネスを維持できています。 しかしながら、「RGBカラー」で作成されたPDFでは、文字オブジェクトとか下方のグレーの帯部分は、K=100%やグレイ値を維持できておらずCMYが混入しております。 したがって、K=100%値やグレー値を保持したい印刷用途では「CMYKカラー」を選択したPDFを使用することがお勧めです。 RGBオブジェクトとしてPDFに埋め込まれたRGBカラーバーは、RGBオブジェクトとしてPDFに埋め込まれていますが、PACKZでは一度CMYKカラースペースに変換して印刷用のCMYK値に変換したた後、再度画面用のRGBカラースペースに戻して表示しているので、表示される色の彩度が落ちています。
また、PACKZのアセットの画面で、リンクされている画像オブジェクトのカラースペースとカラープロファイル名を表示しております。「CMYKカラー」のPDFでも「RGBカラー」のPDFでもリンクされる画像のカラースペースとカラープロファイルに違いはありません。 期待通り、CMYKの色帯のびはCMYK画像で、それ以外の画像はAdobe RGBのRGBカラースペースで保存されていることが確認できます。
以下は、Adobe Acrobat X Proで表示したときのスクリーンショットの比較です。

AcrobatのPDF表示方法はPACKZとは異なります。 「CMYKカラー」で作成されたPDFは、PACKZと同じ様に一度印刷機のCMYKカラースペースに変換し、その後表示用にRGBカラースペースに変換して表示しています。 一方、「RGBカラー」で作成されたPDFは、PACKZとは異なり、RGBオブジェクトは、CMYKカラースペースに変換せずにディスプレイのRGBカラースペースに変換して表示しています。 したがって、RGBオブジェクトの色は鮮やかに見えます。 ただし、これには印刷で再現できない色も含まれます。 Acrobat X Proの「出力プレビューモード」にすれば、PACKZと同じような表示方法となり。 両者のスクリーンショットで違いは分からなくなります。
Illustratorの設定とPDF生成オプションの設定方法に関しては説明を割愛しますが、今回は以下の様な方針でPDFを生成しました。
1. 文字やその他AI内グラフィックオブジェクト:CMYK Japan Color 2001 Coated
2. 外部リンク画像: RGB Adobe RGB
ターゲットの印刷機が Japan Color 2001 Coated に調整されたデバイス条件の場合、CMYK値を変換する必要がないので、Illustratorで指示したK=100%やグレー値にCMYが混ざり込む事なく印刷できます。 Adobe RGBのRGB画像は、プリンタのガモットであるJapan Color 2001 Coatedの色域内にマッピングされます。この場合は、せっかく広い色域のAdobe RGBで画像を保存していても、印刷出力の色域を拡張できません。
もしプリンタが、4色CMYKに加えその他一次色インク(特色)(ex. ビビットカラーインク、RGBインク)をサポートしている等の理由で、Japan Color 2001 Coated の色域を超える色域をサポートしている場合、Japan Color 2001 Coated -> Printer profile (6色や7色のマルチカラープロファイル)のデバイスリンクプロファイルを使用して、K=100%やグレー値の保持を考慮しながら変換することも可能となります。 ただし変換してもCMYKで指定されたオブジェクトの色が鮮やかに変わるものではありません。
一方、Adobe RGBのRGB画像は、Adobe RGB -> Printer profileのデバイスリンクプロファイルを使用して、カラースペース変換できます。この場合は、Japan Color 2001 Coated の色域を超える色再現が可能となります。 もちろん高品質なマルチカラープリンタプロファイルを作成する必要があります。 CoPrAを使用すれば、高品質なプリンタプロファイルとデバイスリンクプロファイルを作成できます。 また、ZePrAを使用すればPDFジョブの最適化が可能です。
その他の注意事項:
印刷会社側のPCフォント環境との違いを配慮し、通常全てのフォントデーターをアウトライン化、もしくはフォントを埋め込みます。 ただし、バリアブルデーターとなるテキスト(0000001部分)は、サブセットフォントではなくフルのフォントを埋め込む必要があります。これはサブセットとして埋め込むと、例えば"2"のグリフデーターが含まれていない為です。 0000001部分以外のフォントは「書式」->「アウトラインを生成」でアウトライン化しています。
今回の例では、Gold/Gold Embossでは特色を指定しております。3Dシュミレーションではレイトレーシングの特殊効果が出るようにしています。
PINNACLEと女性の画像は広い色域を維持したいので、あえてAdobe RGBのままリンクしています。この場合、リンクされるRGB画像のプロファイルを保持しています。
結論:
画像中心の印刷物では、「RGBカラー」でPDFを生成することも一つのアイディアですが、テキストでK=100%を維持することが困難で、墨だけを使用したグレー(ex. K=80%)のベクターオブジェクトにCMYが混入したり、またビジネスグラフィックス等でCMY値のピュアネスを維持することが困難であったりするかもしれません。 そこで、「CMYKカラー」を選択し、広い色域を確保したい画像は、Adobe RGB形式で外部リンクし、CMYKをコントロールしたいところはCMYKオブジェクトを使用するといったハイブリッドの運用が期待されます。
本ドキュメントに記載の方法は、Illustrator 2023の特性に依存している部分があり、Illustratorの動作が将来変わると機能しなくなる可能性もあります。 また、本ブログに記載されている情報の利用によって生じた損失や損害に対して、いかなる保証も行わず、一切の責任を負いません。 さらに、本ブログに記載されている内容は予告なく変更される場合があります。予めご了承ください。
まず、どのような構成でアートワークが作られているかを説明(CMYKカラーの場合)します。

上部帯部:Illustratorで生成 Gold特色
Hybrid Software Group PLC: アウトライン化テキスト K=100%
PINNACLE: PNG画像 リンクファイル Adobe RGB
女性の写真画像: JPEG画像 リンクファイル Adobe RGB (元はsRGBだがCoPrAでAdobe RGBに変換済み)
SmartDFE : AI リンクファイル CMYK U.S. Web Coated (SWOP) => 開く時無効となる
Global Graphics: アウトライン化テキスト Gold Emboss特色
Serial No. : アウトライン化テキスト K=100%
00000001: Gill Sans Regular Full Embedded K=100%
RGBカラーバー: TIFF画像 リンクファイル Adobe RGB
CMYKカラーバー: TIFF画像 リンクファイル CMYK (no tag)
下部帯部: Illustrator で生成 K=80% グレー
東京都...: アウトライン化テキスト 白
通常Illustratorで最初にドキュメントを作成する時、「ドキュメントのカラーモード」として、「CMYKカラー」もしくは「RGBカラー」を選択します。 これはIllustratorの仕様のようです。 印刷会社からは、通常「CMYKカラー」を選択するように指示されると思いますが、RGB印刷やビビッドカラー印刷では「RGBカラー」を選択するように指示されることもあるようです。 しかしながら、「RGBカラー」を選択すると、Illustrator上で作成するすべてのオブジェクトが基本的にRGB形式のオブジェクトとなり、CMYKの値が制御できないといった問題が発生します。 私の希望は、RGBやCMYKオブジェクトが一つのPDF内に混在でき、それぞれのオブジェクトにプロファイルがタグ付けされていることなのですが、Illustratorでは仕様的な制約があります。 なかなか思う通りにオブジェクトのカラースペースを制御できません。
Illustrator上で作成されるオブジェクトは、基本的には「ドキュメントのカラーモード」で設定されたカラースペースのオブジェクトとなります。 ただし、外部リンクを使用すれば、リンクされる外部ファイルのカラースペースを保持できるようです。 この特徴を活かして、希望するPDFを制約があるもののなんとか作成できそうです。 尚、リンク画像を埋め込むとドキュメントのカラースペースに統合されてしまいますので、常にリンクを維持するように注意が必要です。
以下は、「ドキュメントのカラーモード」で、「CMYKカラー」と「RGBカラー」モードを選択して生成したPDFをPACKZで表示したときのスクリーンショットです。

左上側が「CMYKカラー」を選択したときに作成されるPDFの表示例で、右下側が「RGBカラー」を選択したときに作成されるPDFの表示例です。 PACKZは、印刷用のツールなので、表示ではCMYKカラースペースに一度変換し、それを表示用の画面のプロファイルでRGBカラースペースに戻して表示しています。 結果、スクリーンショット的には両者でさほど違いは見受けられません。
CMYKオブジェクトとしてリンクされているCMYKカラーバー画像は、CMYKオブジェクトとしてPDFに埋め込まれているので、両PDFともCMYKのピュアネスを維持できています。 しかしながら、「RGBカラー」で作成されたPDFでは、文字オブジェクトとか下方のグレーの帯部分は、K=100%やグレイ値を維持できておらずCMYが混入しております。 したがって、K=100%値やグレー値を保持したい印刷用途では「CMYKカラー」を選択したPDFを使用することがお勧めです。 RGBオブジェクトとしてPDFに埋め込まれたRGBカラーバーは、RGBオブジェクトとしてPDFに埋め込まれていますが、PACKZでは一度CMYKカラースペースに変換して印刷用のCMYK値に変換したた後、再度画面用のRGBカラースペースに戻して表示しているので、表示される色の彩度が落ちています。
また、PACKZのアセットの画面で、リンクされている画像オブジェクトのカラースペースとカラープロファイル名を表示しております。「CMYKカラー」のPDFでも「RGBカラー」のPDFでもリンクされる画像のカラースペースとカラープロファイルに違いはありません。 期待通り、CMYKの色帯のびはCMYK画像で、それ以外の画像はAdobe RGBのRGBカラースペースで保存されていることが確認できます。
以下は、Adobe Acrobat X Proで表示したときのスクリーンショットの比較です。

AcrobatのPDF表示方法はPACKZとは異なります。 「CMYKカラー」で作成されたPDFは、PACKZと同じ様に一度印刷機のCMYKカラースペースに変換し、その後表示用にRGBカラースペースに変換して表示しています。 一方、「RGBカラー」で作成されたPDFは、PACKZとは異なり、RGBオブジェクトは、CMYKカラースペースに変換せずにディスプレイのRGBカラースペースに変換して表示しています。 したがって、RGBオブジェクトの色は鮮やかに見えます。 ただし、これには印刷で再現できない色も含まれます。 Acrobat X Proの「出力プレビューモード」にすれば、PACKZと同じような表示方法となり。 両者のスクリーンショットで違いは分からなくなります。
Illustratorの設定とPDF生成オプションの設定方法に関しては説明を割愛しますが、今回は以下の様な方針でPDFを生成しました。
1. 文字やその他AI内グラフィックオブジェクト:CMYK Japan Color 2001 Coated
2. 外部リンク画像: RGB Adobe RGB
ターゲットの印刷機が Japan Color 2001 Coated に調整されたデバイス条件の場合、CMYK値を変換する必要がないので、Illustratorで指示したK=100%やグレー値にCMYが混ざり込む事なく印刷できます。 Adobe RGBのRGB画像は、プリンタのガモットであるJapan Color 2001 Coatedの色域内にマッピングされます。この場合は、せっかく広い色域のAdobe RGBで画像を保存していても、印刷出力の色域を拡張できません。
もしプリンタが、4色CMYKに加えその他一次色インク(特色)(ex. ビビットカラーインク、RGBインク)をサポートしている等の理由で、Japan Color 2001 Coated の色域を超える色域をサポートしている場合、Japan Color 2001 Coated -> Printer profile (6色や7色のマルチカラープロファイル)のデバイスリンクプロファイルを使用して、K=100%やグレー値の保持を考慮しながら変換することも可能となります。 ただし変換してもCMYKで指定されたオブジェクトの色が鮮やかに変わるものではありません。
一方、Adobe RGBのRGB画像は、Adobe RGB -> Printer profileのデバイスリンクプロファイルを使用して、カラースペース変換できます。この場合は、Japan Color 2001 Coated の色域を超える色再現が可能となります。 もちろん高品質なマルチカラープリンタプロファイルを作成する必要があります。 CoPrAを使用すれば、高品質なプリンタプロファイルとデバイスリンクプロファイルを作成できます。 また、ZePrAを使用すればPDFジョブの最適化が可能です。
その他の注意事項:
印刷会社側のPCフォント環境との違いを配慮し、通常全てのフォントデーターをアウトライン化、もしくはフォントを埋め込みます。 ただし、バリアブルデーターとなるテキスト(0000001部分)は、サブセットフォントではなくフルのフォントを埋め込む必要があります。これはサブセットとして埋め込むと、例えば"2"のグリフデーターが含まれていない為です。 0000001部分以外のフォントは「書式」->「アウトラインを生成」でアウトライン化しています。
今回の例では、Gold/Gold Embossでは特色を指定しております。3Dシュミレーションではレイトレーシングの特殊効果が出るようにしています。
PINNACLEと女性の画像は広い色域を維持したいので、あえてAdobe RGBのままリンクしています。この場合、リンクされるRGB画像のプロファイルを保持しています。
結論:
画像中心の印刷物では、「RGBカラー」でPDFを生成することも一つのアイディアですが、テキストでK=100%を維持することが困難で、墨だけを使用したグレー(ex. K=80%)のベクターオブジェクトにCMYが混入したり、またビジネスグラフィックス等でCMY値のピュアネスを維持することが困難であったりするかもしれません。 そこで、「CMYKカラー」を選択し、広い色域を確保したい画像は、Adobe RGB形式で外部リンクし、CMYKをコントロールしたいところはCMYKオブジェクトを使用するといったハイブリッドの運用が期待されます。
本ドキュメントに記載の方法は、Illustrator 2023の特性に依存している部分があり、Illustratorの動作が将来変わると機能しなくなる可能性もあります。 また、本ブログに記載されている情報の利用によって生じた損失や損害に対して、いかなる保証も行わず、一切の責任を負いません。 さらに、本ブログに記載されている内容は予告なく変更される場合があります。予めご了承ください。
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