高速のワンパスインクジェット印刷における出力画像品質の課題

 前回までに高速のワンパスインクジェットプリンタでどのようにすれば高速に印刷できるかを説明してきましたが、今回は出力画像品質面での課題と、それらのソリューションを紹介させていただきます。

 まず、インクジェット印刷機では、通常従来の網点(AMスクリーニング)ではなくFMスクリーニングを使用しておりますが、スクリーニングのデザインや使用条件により、チェーニング、モットリング、オレンジの皮効果といったさまざまな問題が発生します。

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 弊社では、さまざまな使用条件毎に最適化した3種類のAIS(Advanced Inkjet Screens)と呼ばれるインクジェット用のスクリーンセットをを開発しました。以下にそれら3種類のFMスクリーニングを簡単に説明します。

● Mirror: ブリキ缶やフレキシブルパッケージなどの吸収性が低く、乾燥に時間がかかる媒体や濃いメタリックインクによる印刷に適している。
● Pearl: 吸収性の高い媒体上で自然なイメージを表現するのに最適。チェーニングやストリーキングといった問題に対処することを主な目的としている。
● Opal: MirrorとPearlの両方の特徴を組み合わせたもの。

 また、PostScriptの仕様では、さまざまなスクリーニングに対応できるフレームワークを提供しておりますが、その仕様は20年以上も前に制定されたもので、最近の技術的な要件に応えるのが少し困難になってきました。 Harlequin RIPでも、互換性の観点でこれらのスクリーニングフレームワークに対応しておりますが、以下の理由でScreenProと呼ばれる外部スクリーニングエンジンを開発しました。

● 最新のスクリーニングアーキテクチャに対応する為
 PostScript仕様で規定されているアーキテクチャが古く、特に2-bitと4-bitのスクリーニングへの対応が困難な為
● スケーラブルにする為
 Harlequin Direct内では複数のRIPとScreenProを使用している。ジョブ毎に最高のパフォーマンスを得るために、使用するRIPとScreenProの数を最適化できることが望ましい為。RIPの中のスクリーニングを使用するとRIPとスクリーニングは1対1であり、どちらかに処理の比重が傾く時に、処理速度の最適化が困難です。

 さらにワンパスのインクジェット印刷機では、インクジェットヘッドを千鳥状にならべて印刷幅を拡張して印刷機として製品化しておりますが、それぞれのインクジェットヘッドの濃度ばらつき、インクジェットヘッド内での濃度ばらつき(スマイル問題)が発生します。 当社ではPrintFlatと呼ばれる技術を開発し、これらの印刷濃度のバラツキ問題を補正する技術をライセンスしています。

図(PrintFlat)
PrintFlat.png

 さらにインクジェットならではの問題として、ノズルの目詰まり問題があります。 一般的には、特定ノズルが目詰まりした時、もしくは吐出が不安定になった時、そのノズルに対する出力を完全に停止し、近隣ノズルで補正する技術を提供しております。 補正の仕方はさまざまあります。 弊社でもシスターカンパニーであるMeteor Inkjet社のインクジェットヘッドドライバボードを使用して、NozzleFixとよばれるノズル欠補正に対応しています。

ノズル欠補正

 インクジェットヘッドの吐出に関連した問題に対処する従来の方法の多くは、ノズル障害を検出できるパターンを実際に印刷し、その結果を目視もしくはスキャンして不良ヘッドとノズルを特定するものでした。 Meteor Inkjet社では「インクジェットノズル状態検出(Inkjet nozzle status detection)」に関する米国特許 (米国特許第 11,504,966 号)を持っており、ピエゾ励起後のノズルからの電気フィードバックのリアルタイムモニタリングを使用して、目詰まりしているノズル、または目詰まりしそうなノズルを検出する技術を保有しています。

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